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分割協議が終わった後に遺言書が出てきた
父親が亡くなり、遺産が遺産分割協議を経て相続人に分配されました。ところが、ある日、父親の遺品を整理していると、遺言書が見つかりました。検認したところ遺産分割協議の内容とは異なるものでした。改めて協議を行う必要があるでしょうか?
相続トラブルに役立つ知識
遺言書は、亡くなった人(被相続人)が遺された親族に対して送る最後のメッセージで、非常に大きな力をもっています。そのため、遺言書に記された内容は最大限に尊重されるべきものとされており、法律で定められている法定相続分よりも優先されるという点です。
(1)相続人全員の意思を確認
遺言書の内容は最大限に尊重されるべきものであり、法定相続分よりも優先されるものです。したがって、基本的には「遺言書の内容に従う」ことになります。相続人全員が遺産分割協議の内容に納得していたとしても、後から発見された遺言書の内容と異なる場合は、協議の内容は無効となります。
しかし、後から発見された遺言書の内容を確認した相続人全員が、「既に行った遺産分割協議の内容を優先させたい」と考える場合は、遺産分割をやり直す必要はありません。このようなケースが起こった場合は、速やかに相続人全員を集めて遺言書の内容を確認するとともに、遺産分割協議をやり直したいかどうかの意思を確認するようにしましょう。
なお、発見した遺言書は絶対にその場で開封してはいけません。必ず、遺言書を家庭裁判所に持参して「検認」の手続きを行ってください。
(2)協議のやり直しが必要となる場合の例
後から発見された遺言書の内容を確認した後で、相続人の誰かが先に行われた遺産分割協議の内容に同意しない場合は、再分割の協議を行う必要があります。遺言書のなかに「子どもの認知」や「第三者への遺贈」に関する内容があった場合も、再分割の協議が必要です。
遺言書では、その内容を確実に実現させるために「遺言執行者」を指定することができます。後から発見された遺言書で遺言執行者が指定されていた場合、再分割の協議が必要か否かは、遺言執行者の判断に委ねられることになります。
また、被相続人は「財産を相続させたくない相続人」から相続権を奪うことも可能です。相続人として廃除されている人が遺産分割協議に加わっていた場合は、廃除された人を除いて再分割の協議を行います。
★用語解説★
- 検認
相続人に対して遺言の存在や、その内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止する手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。 - 遺言執行者
遺言書に書かれている内容の実現のため、各種相続手続きを中心となって進めていく人のこと。遺言者が遺言で指定していない場合は、家庭裁判所で選任手続きを行って指定されます。