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非課税で生前贈与を行う方法を知りたい
今年で76歳になる私には、70歳の妻の他、長男と長女がいます。子ども二人は、どちら結婚して家庭をもっていて、たいした苦労もなく生活しているようです。私の財産はそんなに巨額というわけではありませんが、相続税が負担にならないように、二人に現金を生前贈与として渡そうと思っています。ただ、生前贈与にも税金がかかると聞いたことがあるので、非課税で贈与できる方法があったら教えてください。
相続前に役立つ知識
財産をたくさんもっている方のなかには、今回のご相談のように、将来相続人になる人の相続税の負担を減らすために「生前贈与」を活用なさるケースが多いようです。しかし、場合によっては「生前贈与」にも贈与税がかかってしまう可能性があります。そこで、「生前贈与」を非課税で行えるの6つの枠についてご紹介しましょう。
⑴基礎控除
「1年間で贈与を受けた金額が110万円以下なら、贈与税が課せられない」という基礎控除が法律で規定されています。
!注意点
毎年同じ相手から同じ金額の贈与を受け取り続けていると、税務署から「多額の贈与を毎年分割して行っている」とみなされて、贈与税の納付を求められる可能性がありますので、要注意です。
⑵相続時精算課税の特例
60歳以上の親か祖父母から20歳以上の子どもか孫への贈与は、「2,500万円までなら非課税」となります。贈与するものは現金であろうが、不動産であろうが構いません。
!注意点
この制度は一度選択すると変更出来ません。また、贈与者が被相続人となる相続時に相続財産に加算されます。その相続に相続税がかかる場合には注意が必要です。
⑶住宅取得資金贈与の特例
自分たちが住む住宅の購入資金を、親や祖父母から贈与してもらう場合は、条件によって「最大1,200万円までの贈与が非課税」となります。この特例は、「平均年収と平均貯蓄が低下しているという傾向があるのに、住宅価格が年々上昇していて住宅を取得しにくい」という社会的な背景をふまえて設けられています。そのため、新しく家を建てることを検討している人にとっては、役立つ特例制度じゃないでしょうか。
⑷夫婦間贈与の特例
婚姻の期間が20年を越える夫婦間で、夫から妻に、または妻から夫に居住用不動産(家や土地)を贈与する場合、「2,000万円までなら非課税」となります。
!注意点
「同じ相手には一生に一度しか利用できず、贈与を受けた家や土地に住み続けなくてはならない」という条件が設けられています。
⑸教育資金贈与の特例
30歳未満の子どもや孫に対する教育資金の贈与は、「1,500万円までなら非課税」とされています。1,500万円の非課税が適応されるのは、学校などに支払われる入学金・授業料・給食費などです。それ以外の、学習塾や習い事にかかる費用に対する贈与は「500万円までが非課税」となります。この制度は、2013年4月1日から2019年3月31日までの期間限定措置です。
!注意点
贈与を受けた人が30歳になった際に、贈与されたお金が残っているとその段階に贈与があったとみなされて、贈与税が課せられてしまいます。
⑹結婚子育て資金贈与の特例
親や祖父母から、20歳から49歳までの子どもや孫の結婚・子育て資金について贈与する場合、「1,000万円(結婚資金は300万円)までが非課税」となります。この特例は、2015年4月1日から2019年3月31日までの期間限定措置です。
- 結婚に関する資金として該当するもの
結婚式と結納や結婚に伴う引越しなどにかかる費用 - 子育てに関する資金として該当するもの
妊娠や出産や不妊治療にかかる費用と子どもの医療や保育にかかる費用です。
★まとめ★
生前贈与のなかには、非課税で行えるパターンがあります。6つのなかから検討してみてください。
★用語解説★
- 生前贈与
生きているうちに、財産を譲ることです。その目的は、相続財産つまり死後に渡される財産のいくらかをあらかじめ生前に渡しておくことで、相続財産を減らし、それによって相続税を減らすことにあります。ただこの場合、相続税は減りますが贈与税がかかります(民法第903条)。