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遺産分割協議で決着がつかない場合、公的な調停方法はあるの?
かなりの資産を所有していた父親が昨年亡くなり、今年、立て続けに母親が亡くなりました。兄弟姉妹が多く、父親の資産が豊富なために昨年はかなりの時間をかけて相続を行いましたので、今年はスムーズに済ませたいと思っています。しかし、昨年の相続で兄弟姉妹の間に軋轢ができてしまい、ひょっとすると遺産分割協議だけでは決着しないかもしれません。このような場合は、公的な調停方法が可能になるのでしょうか?
相続トラブルに役立つ知識
遺産分割協議での話し合いがまとまらず、裁判手続きを考える場合には、「遺産分割調停」または「遺産分割審判」を申し立てることになります。遺産分割事件の場合は「調停」と「審判」(裁判)という選択肢が準備されており、まずは「調停」を試みるのが基本です。
(1)遺産分割調停の流れ
遺産分割調停は裁判所を交えた遺産分割の話し合いなので、管轄裁判所に調停申立書を提出し、手数料を納付するという流れで手続きを行います。申立書の書き方や必要書類などについては、裁判所の準備している書式を利用すればさほど難しい手続きではありません。
調停申立書が受理されて相手方に送達されると、裁判所から調停を行う日(期日)が指定されます。期日に裁判所に出頭し、裁判官や調停委員を相手にあなたの主張を伝えていくことになりますが、その際は申立人とその他の相続人とで控室が分かれていて、順番に調停室へ入室して裁判官等へ主張を行い、当事者が顔を合わせることはほとんどありません。ただし、初回と最終回のみ、当事者全員に手続内容などが説明されるため顔を合わせることはあります。
1回の期日で話し合いがまとまれば調停は終わりますが、そうでなければ何回かの期日を積み重ねて調停の成否を探ることになります。調停がまとまると、調停調書が作成され、それが「債務名義」として強制執行もできるような効力をもつ文書になります。調停が成立した以上は、調停調書どおりの遺産分割をせざるを得ませんので、内容に納得できない場合はその都度きちんと意見を伝えることが大切です。
調停がまとまらない場合には、調停を取り下げない限り自動的に審判手続きが開始され、通常の裁判と同様に当事者の主張立証が行われることになります。
(2)期間・費用・必要書類
- 期間
遺産分割調停にかかる期間は当事者の数や具体的な状況によって異なりますが、概ね0~5回の調停(1年以内)での決着が見込めると考えていいでしょう。これを「長い」と見るか「短い」と見るかは人それぞれですが、無為な話し合いを重ねるよりは、裁判所を交えて明快な解決を図るほうが当事者にとってプラスになるのではないでしょうか。 - 費用
遺産分割調停の申立手数料は、被相続人一人につき1,200円分の収入印紙と、当事者の数に応じた連絡用の郵便切手代だけですから、よほどのことがなければ1万円を超えることはないかと思います。
連絡用の郵便切手代は申し立てる裁判所によって額や切手の組み合わせが異なるので、申し立てる前に必ず管轄裁判所で確認しましょう。現金納付を認めている裁判所もあれば、所定の額・枚数に応じた切手の納付を求める裁判所もあるので、内訳や納付方法についてよく確認することが大切です。
なお、遺産分割調停の場合、概ね当事者1人あたりが800円分強で、それに加えて850円分程度の切手が別途必要になることが多いようです。
必須書類 申立書 1通 申立書の写し 相手方の人数分 〈添付書類〉 - 同じ書類は1通でOK
- 戸籍謄本は除籍謄本・改製原戸籍謄本でもOK
- 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 死亡による代襲相続が発生している場合、死亡した被代襲者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍の附票
- 遺産に関する証明書:固定資産税評価証明書、不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写しや残高証明書等
相続人の組み合わせによって必要になる書類 相続人に父母(直系尊属)が含まれる場合
(配偶者+直系尊属または直系尊属のみの場合)相続人となっている直系尊属と同じ代またはそれより下の代で死亡者がいる場合、その人の死亡の記載のある戸籍謄本 - 相続人が配偶者のみの場合
- 相続人に兄弟姉妹(代襲相続による甥姪)が含まれる場合
- 被相続人の父母の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
- 被相続人の兄弟姉妹で死亡者がいる場合、その人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- 代襲者としての甥姪に死亡者がいる場合、その人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 相続税申告書
- 地図(公図)
- 賃貸借契約書
- 預貯金の残高証明書
- 葬式費用明細書