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兄弟姉妹で遺産相続するときに知っておくべきことは?
父親が5年前に亡くなり、母親は既に80歳です。子どもは長男の私をはじめに弟妹が3人います。まだ早いとは思いますが、母親が亡くなったときに遺産相続について兄弟姉妹間で醜い争いをしたくないので、念のためポイントになることを教えてもらえないでしょうか?
相続トラブルに役立つ知識
ご両親が亡くなって遺産相続が始まると、今まで仲が良かった兄弟も関係が悪化してトラブルに発展することはよく見られることです。
(1)兄弟間でトラブルになる原因はさまざま
ひとつは、被相続人の資産の把握ができていなくて、思いもよらない資産があったというケースです。「両親の財産を整理していたら、意外と財産をもっていた」となれば、今まで仲がよかった兄弟間でトラブルが生まれる可能性も高くなるでしょう。また、建物や土地、証券などが複数あった場合、一軒家のみの資産の場合など、キッチリ分配できないこともトラブルの原因になります。
このほかにも、下記のように実に多様な事情でトラブルが起こっています。
- 兄弟間で相続する遺産の割合が決まらない
- 音信不通で絶縁状態だった兄弟が相続のときに現れて遺産を要求する
- 親の介護をしていたという兄弟がもう少し色をつけろと言ってきた
- 甥や姪も遺産を要求してくる
- 兄弟の配偶者が遺産を要求する
- 愛人の子どもが登場 など
(2)法定相続分で決められた割合
民法第900条によって、次のような遺産分割の割合が定められています。
相続人の組み合わせ | 配偶者 | 子ども | 直系尊属 | 兄弟姉妹 |
---|---|---|---|---|
配偶者のみ | 100% | |||
配偶者+子ども | 1/2 | 1/2(※) | ||
子どものみ | 100%(※) | |||
配偶者+直系尊属 | 2/3 | 1/3(※) | ||
直系尊属のみ | 100%(※) | |||
配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4 | ||
兄弟姉妹のみ | 100%(※) |
以上の法定相続分は、あくまでも「こういった割合で分けていくのがよい」という参考に過ぎません。相続人・兄弟同士で話し合って納得し、相続人全員で話し合いを行えば、自由に分配比率を変更できます。
被相続人が遺言を残している場合は、基本的にそれに沿った分配になります。ただし、相続人に法律上分配が認められる遺留分を侵害することはできません。
(3)遺産分割の方法
相続するのは、預金や現金だけでだけではありません。土地、建物、証券、骨董品等明確な分割が難しい資産もあります。そういう際に、知っておきたいのが遺産分割の方法です。相続人同士で話し合いをする上でも、どんな分割の方法があるか事前に理解しておくことをお勧めします。
- 現物分割
「不動産は自分に、預金は妹に、その他の財産は全て弟に」というように、どの相続財産を誰が相続するかを現物によって分割する方法です。遺産を分割する基本となる方法であり、最も多く利用されている方法です。 - 換価分割
不動産などの遺産を売却して現金に換えたうえで、この現金を相続分に応じて分割する方法。誰も住んでいない家や処分が用意な有価証券を相続した際に適しています。 - 代償分割
ある相続人がすべての遺産を相続する代わりに、他の相続人に対して相続分に応じた金銭の支払いをする方法。相続人が居住している土地や建物など、現物分割も換価分割もしにくいものの場合はベストな方法といえます。しかし、この分割方法だと、相続する人に支払いできる経済力が求められます。 - 共有分割
不動産や有価証券など、それぞれの遺産を相続人で共有する方法。これは抜本的な解決を実現する分割方法ではなく、問題を先送りしているだけのケースといえます。たとえ、その場は解決できたと思っていても、共有者が死亡した場合には新たな相続人の名義が加わり、複雑さが増す原因にもなります。
★用語解説★
- 法定相続分
民法で定められた各相続人の取り分のことで、遺言などがない場合に、「このように財産を分けるのが、もっとも良いのではないか」と決めている分け方です。相続人同士が話し合って分割割合を決める遺産分割協議においては、その相続分は自由に決めていいことになっています(民法第900条)。 - 遺留分
遺言によって法定相続分を侵害された法定相続人が、一定の割合で遺言を否定して法定相続分の一部を取り戻すことができる権利のことです(兄弟姉妹を除く)(民法第1028条)。