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遺産分割調停を有利に進めるための方法
母親の死後に行った遺産分割協議がうまく進まず、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことになりました。こういう場は初めてで、どんなふうに進行するのかよく分かりません。失敗しないように抑えておくべきポイントがあったら、教えてもらえないでしょうか。
相続トラブルに役立つ知識
遺産分割調停では、当事者がそれぞれ裁判官などに自分の考えを伝え、それらを総合して裁判官などが分割内容を提案したり、当事者の意見をすり合わせたりして解決が図られます。ですから、「これをすれば絶対に勝てる」という方法はありません。しかし、調停に関わる人は、裁判官も含め「普通の大人」なので、少しの心がけがあなたを有利に導く可能性があります。
(1)喧嘩腰にならない
遺産分割のようにお金の絡む話をする際は、精神的に余裕がなく切羽詰まっているかもしれません。ただ、そういった場合であっても裁判官や調停委員相手に喧嘩腰で接することだけは、絶対に避けるべきです。
調停の目標は「全員での合意」を図ることです。ですから、当事者間での勝ち負けではなく、いかに自分の希望に近い結論を導くかに集中しましょう。そのためには、裁判官や調停委員には礼儀正しく接し、あなたの好感度を上げたほうが絶対に得です。
調停は話し合いの場。人柄によって心証が左右されることになります。無作法だったり横柄な人よりも、礼儀正しい人が好まれるのは当たり前でしょう。とはいえ、わざわざへりくだって話し合う必要はありませんので、常識であることを心掛けていればいいかと思います。
- 挨拶はきちんとする
- 入退室時のノックや礼など、大人としての一般的なマナーを守る
- 横柄な態度や非常識な言動、相手方の悪口は避ける
- 感情的になり過ぎず、論理的に淡々と話すよう心がける
- 清潔感のある、常識的な服装で参加する
- 相手の話を遮らないできちんと聞く
- 分からないことは質問したり、回答を保留する
- 一定の礼儀を保って接する
(2)相続財産や相続に関する事項は正直に
相続に関わる事項で知っていることを曖昧にしたり、隠したり、騙すことはしないようにしましょう。遺産分割調停や遺産分割審判をする際には、どこかの段階で相続財産の目録を提出することになりますが、当事者で遺産や相続についての隠しごとなどがあると、目録などの修正作業はもちろん、「隠しごとをして相手方を騙そうとしている」と悪い心証を抱かれてしまうおそれがあります。
あなたにとって不利益な情報であっても、それが既に協議の場に現れているのであれば、ごまかしたり言い訳をせずに正直に事実を話すことがよい結果になるはずです
(3)自分の主張は遠慮なく
裁判官や調停委員といった他人にお金の絡む希望を伝えるのは、恥ずかしかったり、言いにくかったりするかもしれません。しかし、あなたの考えや希望を遠慮なく伝えれば、調停の解決案を探ることができようになり、結果的に当事者全員のためになります。
遺産分割調停の場合は、ほとんどのケースで「誰が、どの遺産を、どれだけもらうか」を決めるのが目的ですから、「どうしてもこの○○はほしい」や「最低でも○○円は分けてほしい」といった簡単な要望で構いませんから、だんまりを決め込まずに意見を述べるようにするようにしましょう。
なお、調停中に調停委員などから質問されることがありますが、答えにくい場合は回答を保留しても問題ありません。焦って答えず、「次回に回答を持ち越す」と伝えるのもおすすめです。
(4)要望すべてが通ると思わない
調停はあくまで話し合いで、解決するにはお互いが譲り合う姿勢も大切です。「私の要望をすべて認めろ」という態度では、相手方はもちろん調停委員などの心証も損ね、それが原因で調停が不調となる可能性もあります。
「譲れるもの」と「譲れないもの」の線引きをしておくのも、調停テクニックとしておすすめです。たとえば、「故人の宝物だった○○だけはほしい」「○○はできればほしいけど譲ってもいい」「○○はほしくない」といったように、優先順位を決めておくわけです。また、「○○だけは○○に渡さないでほしい」といった希望でもかまわないと思います。
線引きをすることは話し合いを円滑に進める助けになるだけでなくリードすることにもなり、逆に相手が強硬な態度を取れば取るほど相手の不利益になる可能性が高くなります。
(5)話しにくいことはメモで整理
調停委員や裁判官の前で緊張して上手に話せない心配があるなら、ぜひともメモを活用してください。先ほどの優先順位を整理したメモを持参してもかまいませんし、その日話したいことをリストアップするのも有効です。また、相手方の主張を忘れないようにしたい場合など、調停中にメモをとっても問題ありません。
(6)弁護士同伴もOK
調停は原則として当事者本人の参加が義務づけられていますが、代理人弁護士を同伴することも認められています(司法書士の同伴は認められないケースが多いです)。高齢の人、他人と話すのが苦手な人は、無理して一人で調停に参加せず弁護士の助けを求めるほうがいいかもしれません。
弁護士は、法的視点や経験則から交渉での落としどころを見極めることに長けていますので、調停の早期合意を目指す場合にも同伴するのがおすすめです。ただし、弁護士は無償で同伴してくれるわけではありませんから、費用面なども十分検討するのが大切です。