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親の再婚相手から 「生前贈与分の返却」を要求されることは?
父親は70歳で、まだしっかりしています。父親が元気なうちに、父名義の家を姉と私の名義にしたいと思っています。その場合の手続きについて教えてください。家の価値を調べるにはどうしたよいのか、名義変更料はどれくらいかかるのか、名義を変更するには日数はどのくらいかかるのか、などなど。税金がかからない方法だと助かります。
相続前に役立つ知識
お父さん名義の家をご姉弟の名義に変更するということは「贈与」に当たり、さまざまな手続きが必要になります。ご自分たちでできることもありますが、その道のプロである司法書士や不動産業者などに依頼しなくては進められない項目も少なくありません。そのこともふまえて、以下のことをご参考ください。
⑴所有権移転登記手続き
手続としては、まずお父さんと相談者、お姉さんとの間で家の贈与契約を締結した上、「所有権移転登記」を行う必要があります。「所有権移転登記」を簡単に説明すると、「元々の名義から新しい名義に変更し、法律的に新しい人の所有物とするための手続き」のことです。この登記をしていなかった場合、契約はしたけど実質は相談者とお姉さんのものではなく、第三者に取られてしまう可能性もあるわけです。手続きについては、自分たちでできることもありますが、けっこう煩雑な作業なので、司法書士の方に依頼した方がスムーズで安心だと思います。
⑵家の価値
一般的に不動産業者に査定依頼する方法がとられています。地元で懇意にしている不動産業者がいらしたら、その人にお願いするのが最適でしょう。その他の方法としては、路線価や固定資産税評価額などを参考にすることも考えられます。路線価は、各地の国税局や税務署、主要な図書館で閲覧できますし、国税局ホームページの「路線価図・評価倍率表」というページでも確認できます。固定資産税評価額については、地元の市役所・区役所で見ることができます。
→ 国税局ホームページ「路線価図・評価倍率表」
⑶費用
法務局 | 登録免許税=不動産の固定資産評価額×2% |
司法書士 | 10万円前後(不動産の場所や数、作成する書類の内容により異なります) |
その他 | 登記事項証明書=不動産1個につき600円 郵便代 など |
詳細は、司法書士とご相談いただいた方がよいでしょう。
⑷税金
相続時精算課税制度の適用を申請すれば、最大2,500万円まで控除可能とされていますが、不動産価値の算定方法を含め、詳細については税理士の方と協議いただいた方が安心です。相続時精算課税制度の概要については、国税庁ホームページにも掲載されています。
→ 国税局ホームページ「相続時精算課税」
⑸名義変更の大まかな流れ
司法書士に協力してもらう場合の流れをご紹介します。
- 必要書類の準備と確認
- 贈与する方(お父さん)、贈与を受ける方(相談者とお姉さん)が司法書士に直接会い、本人確認後に必要書類に捺印
- 司法書士が必要書類を作成
- 不動産を管轄する法務局へ登記申請
- 登記完了(申請してから約1週間~10日かかります)
⑹準備する書類
●贈与する方が用意するもの(お父さん)
- 登記済権利証(または登記識別情報)
- 印鑑(実印)
- 印鑑証明書(発行後3か月以内)
- 住民票(発行後3か月以内)
- 対象となる不動産の固定資産評価額が分かるもの(固定資産税の課税明細書または固定資産評価証明書)
- 身分を証明するもの(運転免許証等) *司法書士への依頼時に必要になります
- 印鑑(実印)
- 印鑑証明書(発行後3か月以内)
- 住民票(発行後3か月以内)
- 身分を証明するもの(運転免許証等) *司法書士への依頼時に必要になります
- 路線価
民道路(路線)に面する宅地1平方メートルあたりの評価額。相続税や贈与税を算定するときの基準として適用される数値です。 - 固定資産税評価額
土地・家屋への徴税額(固定資産税)を決める尺度で、市町村(東京都は23区)が決めている公的価格。実際の不動産売買価格とは、まったく関係ありません。国土交通省が年に1回定める土地の公的価格、地価公示価格(公示地価)の70%を目処に計算されます。なぜ、70%か…次の二つの理由があります。
- 3年に1回の評価なので、土地の価格変動によって所有者(納税者)が不利益にならないようにするため
- あくまでも徴税のための簡便法なので、不当に高い評価額になってしまう恐れもあります。そんな事態を避ける措置として70%という予防線が張られているわけです。
- 相続時精算課税制度
原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
●贈与を受ける方が用意するもの(相談者・お姉さん)
*贈与を受けた方は、翌年に申告が必要になります。
★まとめ★
親子間の不動産名義変更は「贈与」に該当し、煩雑な手続きが必要になります。その道のプロである司法書士などにお願いする方が、安心できるかもしれません。
★用語解説★