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特別縁故者への財産分与の額は?
亡夫の父と長年同居し、ここ15年は私一人で介護してきました。その義父が先日亡くなりました。義父は一人っ子で、亡夫以外に子どもはおらず、妻も両親も既に他界しています。なお、亡夫と私の間には子どもはいませんし、私の知らないところで子どもを設けた様子もありません。私に義父の相続権はないと思いますが、財産を分けてもらう方法はないでしょうか?
相続トラブルに役立つ知識
被相続人の子どもは第一順位の相続人となりますが、子どもの配偶者には相続人の資格はありません。ご相談のケースでも被相続人(義父)の子どもの妻であるご相談者は被相続人の相続人ではないため、相続権を主張して遺産を受け取ることはできません。ただ、事情からすると、義父には相続権のある親族・配偶者が一人も存在しないため、相続人の存在が明らかではないケースのようです。
(1)特別縁故者による財産分与請求
相続人が不存在の場合、被相続人に属する財産は最終的に国庫に帰属することになります(民法第959条)。しかし、被相続人の生前に献身的な世話を行って生活を支えた人(特別縁故者)があるならば、その人に遺産を分配することが被相続人の意志や一般の法感情に沿うと考えられます。そこで、法は特別縁故者の保護と被相続人の意思尊重を趣旨として、次のような者は家庭裁判所に対して遺産の分与を請求できると定めています(民法第958条)。
- 被相続人と生計を同じくしていた者(内縁の配偶者、事実上の養子、同居の子の妻など)
- 被相続人の療養看護に努めた者(献身的な世話をした隣人など)
- その他被相続人と特別の縁故があった者(生活資金・事業資金を援助してきた者など)
(2)分与請求の方法
相続人の存在が明らかでない場合、相続財産は裁判所が選任する相続財産管理人によって管理されます(民法第952条)。相続財産管理人は相続債権者や受遺者に対して弁済するとともに、相続人捜索の公告を行います(民法第958条)。公告期間内に相続人が現れない場合に初めて相続人の不存在が確定します。そして、相続人の不存在が確定し、弁済後の残余財産がある場合には、特別縁故者は相続人捜索の公告期間満了後3か月以内に家庭裁判所に分与を申し立てることができます。
なお、特別縁故者の財産分与請求は、あくまで相続人が不存在で、かつ、上記弁済後に残余財産がある場合に限って認められるものです。したがって、これらの手続きにおいて相続人が発見された場合、または、弁済により残余財産が存しない場合には、特別縁故者として財産の分与を求めることはできません。
★まとめ★
ご質問者は、義父の相続人には当たらず相続権の主張はできません。しかし、15年にもわたって義父と同居し一人で介護してきた点で、特別縁故者に該当するでしょう。他に相続人がおらず、弁済後の残余財産がある場合、相続財産の全部または一部を受け取ることができる可能性が高いと思われます。相続財産管理人による相続人捜索の公告期間満了後、3か月以内に家庭裁判所に特別縁故者としての財産分与の申し立てを行うことをお勧めします。