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遺言書が絶対的な効力を発揮しないケースもあるの?
父親(65歳)と母親(60歳)は健在です。しかし、父親には愛人がいるらしく、遺言書に「全ての財産を愛人に譲る」と記載しているかもしれません。そうなったら、母親も私には何も残されないことになると思います。そんな状況を打開する策はあるのでしょうか? ちなみに、私に兄弟はいません。
遺言書への対応策
ご安心ください。遺言者が書き残した遺言は、100%絶対の効力を発揮するわけではありません。法定相続人は「ある一定以上の財産を相続する権利」が保証されていて、それを「遺留分」と言います。その権利を行使することで、最低限の遺産を相続できます。
遺留分の割合
配偶者、子どもが行使可能な遺留分割合は「相続財産の1/2」で、直系尊属の行使可能な遺留分割合は「相続財産の1/3」です。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。今回の事例を含め、いろいろなケースをご紹介しましょう。
*相続財産は、1億円と仮定。
●今回のケース 相続人:妻/子ども1人
- 法定相続分
妻:5,000万円
子ども:5,000万円 - 遺留分
妻:2,500万円
子:2,500万円
※愛人には5,000万円を限度に財産を遺贈
●他ケース1 相続人:妻/夫の兄弟姉妹1人
- 法定相続分
妻:7,500万円
兄弟姉妹:2,500万円 - 遺留分
妻:5,000万円
兄弟姉妹:0円
※愛人には5,000万円を限度に財産を遺贈
●他ケース2 相続人:子ども1人
- 法定相続分
子ども:1億 - 遺留分
子ども:5,000万円
※愛人には5,000万円を限度に財産を遺贈
●他ケース3 相続人:父親/母親
- 法定相続分
父母:1億円(父母共に存命であれば、各5,000万円) - 遺留分
父母:3,333万円(父母共に存命であれば、各1,666万円)
※愛人には6,666万円を限度に財産を遺贈
●他ケース4 相続人:兄弟姉妹
- 法定相続分
兄弟姉妹:1億円(兄弟姉妹が複数いる場合は1億円を人数で分割) - 遺留分
兄弟姉妹:なし
※愛人には1億円全てを遺贈
★まとめ★
遺言の効力は絶対ではなく、遺留分権利者の遺留分を害する範囲では無効となります。
★用語解説★
- 法定相続人
民法によって定められた遺産相続する権利を有する者。遺言書がない場合は、この法定相続人によって遺産を分割することとなります(民法第890条、887条、889条、889条)。 - 遺留分
遺言によって法定相続分を侵害された法定相続人が、一定の割合で遺言を否定して法定相続分の一部を取り戻すことができる権利のことです(兄弟姉妹を除く)(民法第1028条)。