目次
複数の遺言書が出てきた
父親が89歳で他界しました。父親からは、以前、遺言書を金庫に保管したと聞いていました。確かに金庫のなかにあったのですが、自筆の遺言の他になぜか公正証書遺言の写しも出てきたのです。いったい、どの遺言書が有効なのでしょうか?
遺言書への対応策
遺言書の内容は、慎重に書かれているはずです。また、遺言書の書式は法律によって厳格に定められているので、少しでも書き方を間違ってしまうと、法的に無効となってしまいます。ですから、何度も下書きをしたり、定期的な見直しを行って、内容を改めることもあるでしょう。そのように考えると、複数の遺言書が見つかることは、珍しくありません。とはいえ、どれが有効な遺言書であるかを判断する方法は、とても簡単です。
最新日付の遺言書が有効
まず、複数ある遺言書の日付に注目しましょう。法律では、最後に作成された遺言書、つまり、最新の日付の遺言書が有効だと定められています。でも、「違う時期に書かれた遺言書Aと遺言書Bの内容がかなり異なる」というケースもあります。この場合も、やはり最新日付の遺言書が有効になります。法律では、「新しい遺言書によって、古い遺言書の内容は取り消された」と見なされるからです。
では、どの遺言書にも日付が入っていなかったり、押印がなかったら、どうすればいいのでしょう? この場合は、すべての遺言書が無効になります。遺言書には必ず、日付と押印が必要になるからです。
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が出てきたら
まさに、今回のケースです。仮に、金庫から出てきた自筆遺言証書の日付が、公正証書遺言の写しに書かれた日付より新しかったらどうでしょう?
公正証書遺言は公証人という専門家が作成し、原本が公証役場で保管されるものですから、「日付が古くても、公正証書遺言のほうが有効」と思われがちです。しかし、いくら公正証書遺言が専門家の手で作成され、公証役場で保管されるからといっても、「自筆遺言証書に優先する」という決まりはありません。
したがって、この場合もやはり最新の日付になっている自筆証書遺言の内容に従う必要があります。ただし、「自筆遺言証書が正しい書き方になっていて、法的に有効と見なされる」ということが条件となります。
★まとめ★
複数の遺言書が出てきた場合は、日付が最新のものが有効です。
★用語解説★
- 自筆証書遺言
筆記用具と紙、印鑑があれば作成することができる遺言書。遺言の作成にあたって証人や立会人、遺言書の封入は不要ですが、遺言者の死亡後に家庭裁判所で検認手続を行う必要があります。 - 公正証書遺言
公証役場で公証人に作成してもらう遺言で、最も確実であるといえます。公証役場がどこにあるか分からないときは、インターネットや電話帳で調べるか、市区町村役場に聞けば教えてもらえます。