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「ペットに相続させる」という遺言は有効?
夫が6年前に亡くなり、子どももいない73歳の私は一人暮らしを過ごしています。心身ともまだ問題ないのですが、そろそろ遺産の取扱いについて考えなくてはいけない時期に差し掛かっています。できれば、夫の死後もずっと可愛がってきたペットに全遺産を贈りたいと思っているのですが、有効なんでしょうか?
遺言書への対応策
アメリカでは州によって異なりますが、多くの州でペットに一定の財産を相続させるための制度が法律で定められています。そのため、遺言によってペットに遺産を相続させることも認められているようです。日本でも、今回のケースのように「ペットに遺産を残したい」という声があるのではないかと思われます。
日本の民法では、ペットへの遺産相続は無効
日本ではペットといえども、法律上、人以外のものということで「物」扱いとされています(動物愛護法等の特別法を除く)。そして、日本の民法では相続や遺贈を受けることができるのは「相続人」、つまり「人」に限られていますから、ペットに遺産を相続させることはできません。したがって、仮に「ペットに財産の全部または一部を相続させる」というような遺言を作成していたとしても、その遺言は法律上の効果を生じないことになります。
ペットに遺産を残す方法
①「負担付き遺贈」の利用
「負担付き遺贈」とは、遺産をもらう代わりに何らかの負担を課せられるというものです。今回のケースだと、「遺産をもらう代わりに、ペットの面倒をみなければならない」という内容を遺言に記載しておく形になります。
ただ、遺産をもらった人がちゃんと面倒をみてくれるかどうかは分かりません。そのため、信頼できる人なのかどうかを調査しておく必要がありますし、それを監視する人を選任しておく必要もありますね。
②「遺言信託」の利用
遺言信託とは、契約によって特定の誰かに遺言の管理や執行を任せることを言います。今回のケースだと、「自分が亡くなった場合に財産を信託銀行などに預けて管理してもらい、自分の代わりにペットの世話をしてもらう」ということになります。ただ一般的には、信託銀行などが世話をするのではなく、遺言のなかで指定した人が信託銀行などからペットの飼育に関する費用や報酬を定期的にもらうことで、ペットの世話を行っています。
これであれば、遺産を他の人に渡さずにすむので、より被相続人の希望に近い形で遺産が利用されるようになる可能性があります。いずれにしろ、法的な問題はともかく、まずはペットの面倒をみてくれる信頼できる人(または団体)がいるかどうかを見極めることが重要だと思います。
★まとめ★
ペットへの遺産相続は無効。ただし、「負担付き遺贈」か「遺言信託」を利用すれば可能です。