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相続前 

生前贈与で相続人の一人が既に一部相続していた

生前贈与で相続人の一人が既に一部相続していた

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生前贈与で相続人の一人が既に一部相続していた

50歳の男性です。父親と姉がおり、80歳の父親はかなり衰えて長期間の入院生活を送っています。父親がこんな状態ですから、相続も目前に迫っているのですが、姉が以前、父親から「家を建てる」という理由で1,000万円の生前贈与を受けています。実際の相続手続きで身内間での争いを起こしたくないので、今のうち家族で「生前贈与は相続時にどうなるか」を共有しておきたいと思います。

相続前に役立つ知識

共同相続人のなかに、生前贈与で多額の財産贈与されている人がいる場合、単純に法定相続分で分割を行うと不公平が生じます。そこで、生前贈与は遺産に加算して分割を行い、分割後の金額のうち贈与分については既に相続しているものとして取り扱うことになります。

被相続人死亡時の財産に贈与分をプラス

お父さんが亡くなった時点で持っていた財産を500万円の価値がある土地と、500万円分の預金だったと仮定します。仮に、生前贈与をまったく考えないとすると、お父さんの相続財産は合計1,000万円となりますから、相談者とお姉さんは法定相続分に従って、それぞれ2分の1ずつを相続することになります(民法第900条)。つまり、相談者もお姉さんもそれぞれ500万円が法定相続分ということになります。

しかし実際には、お姉さんはお父さんが亡くなる前にお父さんから1,000万円の贈与を受けていますね。相談者からすれば、お姉さんがさらに500万円を受け取れるとしたら、何か不公平な感じがしませんか? そこで相続の場合、この生前贈与についてはお姉さんが受けた特別な受益と考え、「お父さんが死亡した時点の相続財産」という形にするわけです。これが、「生前贈与の持ち戻し」という理屈です(民法第903条)。

このケースで相続財産がいくらかを考えると、まず、お父さんが死亡した時点で持っていた1,000万円の財産に過去にお姉さんが生前贈与を受けた金額1,000万円を足します。そうすると、相続財産は合計2,000万円ということになります。相談者もお姉さんもそれぞれ2分の1ずつが法定相続分ですから、それぞれ1,000万円をこの相続財産から受け取る権利があります。ただ、お姉さんは既に生前贈与で1,000万円をもらっていますから、法定相続分はすべて満たすことになり、実際に相続が発生した時点でお姉さんがさらにもらえる相続分は0円ということになります。


★まとめ★

生前贈与を受けている人が相続人のなかにいる場合、被相続人が死亡した時点での財産に生前贈与を足して計算することで、公平な財産分割が可能になります。

「生前贈与の持ち戻し」という理屈を知っているか知らないかで、まったく結論が変わってしまうことがお分かりになりましたか? 相続が発生した場合に備えて、このような知識をもっておくと役に立つと思います。


★用語解説

  • 生前贈与
    生きているうちに、財産を譲ることです。その目的は、相続財産つまり死後に渡される財産のいくらかをあらかじめ生前に渡しておくことで、相続財産を減らし、それによって相続税を減らすことにあります。ただこの場合、相続税は減りますが贈与税がかかります。但し,住宅取得資金やお孫さんの教育資金など一定の要件を満たした場合に贈与税が免除になる場合もあります。
  • 法定相続分
    民法で定められた各相続人の取り分のことで、遺言などがない場合に、「このように財産を分けるのが、もっとも良いのではないか」と決めている分け方です。相続人同士が話し合って分割割合を決める遺産分割協議においては、その相続分は自由に決めていいことになっています(民法第900条)。